『田園の詩』NO.40 「厳冬のめぐみ」 (1996.2.27)


 近頃になって何度か降り積もった雪で、わが家から南方正面に見える豊後富士・
由布岳の山頂付近がきれいに雪化粧しました。

 よく晴れた日の早朝などには、雪が少し茜色に染まり、そびえ立つ山全体がきらめ
くように見える時があります。私のは、四季を通じた由布岳の光景の中でも、この時の
姿が一番素晴らしく思われます。

 今年は雪がほとんど降らないので、由布岳の雪化粧は諦めかけていました。息子
にとっても、新しい雪うさぎを作るのは無理かもしれない、と思っていました。けれど
も、自然は期待に違わず私達に雪をプレゼントしてくれました。


       
     年に数回、これ位の積雪があります。朝、車で出勤する人は滑り止めが
     必要ですが、午後には不要になります。小さなデジカメをポケットに入れ、
     散歩の途中で撮影しました。絶好のチャンスをものにしました。(2005.1.2 7:21写)



 南北に長い日本列島なので、雪に対する感情は地方によって悲喜こもごものようです。
当地では雪は歓迎すべきもので、「雪が積もらねば虫が死なぬ」といわれています。

 積雪と寒波で、田畑の害虫が死んで、農作物が受ける被害が少なくて済むらしいの
です。実際のところ、どれ程の虫が死ぬのか分かりませんが、農業する人にとって経験
的に感じていることなのです。

 当地・国東地方の呼び名でネキリムシ(根切虫)という地中に棲む虫がいます。ヨトウ
ガやコガネムシの幼虫らしいのですが、これがなかなかのくせ者で、名前の通り、植え
たての苗木や芽の出たばかりの野菜の茎を、根元から容赦なく噛み切ってしまいます。
農薬を一切使わないわが家の畑は、一年中この虫の駆除に追われます。

 晩秋に、タマネギを千本植えましたが、そういえば現在のところネキリムシにやられた
率が例年より少ない気がします。

 「タマネギ千本とは多いなあ」とよくいわれます。虫にやられる分、生育不足の分、
都会の友人にプレゼントする分などを勘定に入れると、これでちょうどいいのです。
今年は、この分だと、私の勘定を上回る収穫が期待できそうです。

 都会の人達は暖冬を喜ぶでしょうが、農作業を伴う田舎人は、むしろ厳冬を望んで
いるのです。とはいえ、北国に比べたら南国の冬などしれてますが。(住職・筆工)

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